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第9話 「ハンドルがぶれる」

(作成:1999年1月7日 改訂:1999年1月16日)

(TEXT : ヘラルド / E28-520i )


さて、E28のメンテ記事を書かせて頂くことになりまして、まず第一にどのように書いていこうかを思案しました。
鉄のクラウスさんのように回想録的に時系列でかくのもひとつの手ですが、私は不鮮明な記憶をたどるのが苦手なものですから、 いいものができそうにありません。
自分がいろいろ悩んだ経験からすると、メンテに関する情報が項目ごとに書いてあると参照しやすいのではないかと 思いましたので、ここはひとつ、部位ごと、あるいはよくあるトラブルについて一つにまとめて書いていくことにしようかと 思います。

というわけで、まずはE28オーナーの方がまず間違いなく直面すると思われる問題点について書いてみます。



ハンドリングが命のBMWで、もし操縦性が悪ければ車として台無しだというのはどなたもうなづかれるところと思います。
皆さん足回りの良さを保つのには腐心されているかと思いますが、E28の弱点のひとつがここにあります。
ハンドルがぶれたり、高速域で直進性が悪くなったりするのです。

E28の操作性が劣化する原因は、私自身の経験や、ネット上などでいろいろ教えていただいた情報をまとめてみますと、 大きく3種類あるようです。


1. ホイールバランスの狂い、タイヤ自身の性能

こんなのあたりまえじゃないか、といわれるかもしれませんが、E28(同様の足回りを持つE24,E34にも共通します)は特に敏感なようです。
特定の速度、および高速域(<120km/hくらい?)でハンドルがぶれるなら、まず第一にホイールバランスの確認をしてみるべきです。
できれば、オンザカーでバランスを見ることが出来れば一番です。
この振動は路面の状態、パワーオン・オフにはあまり関係がありません。
これをDIYでできる人はまずいないでしょうから、こういう手間のかかる作業に付き合ってくれるいいショップを見つけてじっくりやってもらわなければ ならないでしょう。
また、直進安定性に欠けるようなら、タイヤの空気圧が4輪とも正規の値になっているかどうかを見てください。
また、根本的に高速走行時の直進安定性がプアなタイヤというのも存在するようですから、ほかの点がすべて完璧なのにどうも安定性が良くない、 というようならタイヤを換えてみるという手もありそうです。


2.フロントサスペンション回りのリンクの劣化

いろいろありますが、一番発生しやすいのがステアリングリンケージのセンターロッド(ステアリングギヤボックスのアームに直結している、左右の 車輪の間をつなぐロッド)のボールジョイントのガタと、コントロールアーム(ストラットの下側から2本出ているアーム)のリア側の、車体側端部に 入っているブッシュの亀裂です。

まずセンターロッドのボールジョイントですが、車重に対して明らかに容量不足のようで、すえ切りされる機会の多い車や、負荷の大きいコーナリングを 頻繁にする車では4〜5万キロくらいでガタが出るようになります。
これはE12でもそうでしたし、ほとんど同じサスのE34でも起こるようです。
ここにガタが出ると、ブレ−キング時に軽い振動が出たり、路面の不整でハンドルが取られやすくなります。
ここにガタがあるかどうかのチェックは、前輪が接地した状態でハンドルを左右に振るとステアリングギヤボックスのアームが動きますが、 その動きにセンターロッドが完全に追従するかどうかで判断します。
アームの微小な動きにロッドが追従しないようなら、ガタが出ています。
また、センターロッドと、その両端とストラット下部をつないでいるリンクの結合部のボールジョイントのガタも同様にチェックします。
アームとセンターロッドの間でガタがある場合、ロッドと一体のボールジョイントにガタが出ているので、ロッドASSYを交換する必要があります。
センターロッドとストラットをつないでいるリンクのボールジョイントにガタがある場合は、ボールジョイントだけ交換できます。
いずれの交換も、自分でやる場合にはボールジョイントプーラーを用意した方が賢明です。
ないと非常にやりにくく、また、部品をいためる可能性があります。
センターロッドとステアリングギヤボックスをつなぐボールジョイントにはプーラーが掛けにくく、外すのに苦労します。
車をリフトで持上げないとほとんど無理かもしれません。
センターロッドとストラットの間のリンクのボールジョイントは、プーラーさえあれば簡単に交換できます。
ただし、この部分でトーインを調整していますので、交換した場合トーイン量をチェックして調整する必要があります。
それから、ボールジョイントをチェックするとき、ついでにジョイントのゴムブーツの状態も見ておくのをお勧めします。
ブーツが破れて水が入ると、ジョイントがすぐガタガタになります。
だめになっていたら、アフターマーケットのブーツ(アメリカのBMPのものがお勧めです。
取りつけが普通のゴムブーツのように面倒でないところが便利。)か、910ブルーバードのブーツを入手して交換します。
純正部品ではブーツだけは出ないので、ジョイントASSYやサスペンションアームを買わなければならなくなり、出費がかさんでしまいます。

次にリアコントロールアームのブッシュですが、純正の部品は明らかに耐久性が劣るようで、特に鼻先の重い533iやM535iでハードな 走り(サーキットで走るとか)をするとすぐに亀裂が入ってしまうようです。
おとなしく使っても、6−7万キロも走っていれば多少なりとも亀裂が入っていると思います。
亀裂が入ってくると、軽度なうちは100キロくらいからの軽いブレ−キングと、もっと高い速度域で走行している場合に振動が出ます。
亀裂が大きくなると、80キロくらいからの軽いブレ−キングではすさまじい振動が出るようになります。
完全に切れてしまった状態は経験がないので分かりませんが・・・。
通常のブッシュはリンクなどにはまり込む外周と、ボルトを通す内周に金属製のチューブが同心円上にあり、その間の全周をゴムで埋めています。
フロントコントロールアームのブッシュはこのタイプです。
ところが、リアのブッシュは違っています。外周と内周が、荷重の作用する方向と直角方向で2点つながっているだけで、荷重方向は少し空間が あります。
前述の結合部が荷重で変形するとゴムの突起が接触する構造(文章だけでは説明できません。
BENTLEYのE28のマニュアルをお持ちの方でしたら、16−11ページの図を見ていただくと分かります)になっています。
ハードに走行したり、劣化してくるとこの接続部分が切れてくるのです。
ここのブッシュを交換するためには、アームを車から外してやる必要があります。
車体側はボルト、ストラット側はボールジョイントになっています。
ボルトは非常にアクセスしにくいところにあり、車をジャッキアップしただけでやると結構時間がかかります。
また、取りつけるときもナット側にソケットが掛けられないので、ボルト側をトルクレンチで回すというイレギュラーなやり方をせざるを得ません。
ストラット側は、マウント部がストラットケース下端にボルト3本で止まっているので、ここを外してしまえばボールジョイントを脱着する作業性は良好です。
ただし、ボールジョイントプーラーは必需品ですが。
ブッシュをアームから外すとき、挿入するときには、プレス+ブッシュの外側のリングと同径のチューブ、または交換用の専用工具がないとできません。
すくなくとも、万力で押したくらいでは、ブッシュの外側のチューブが錆びているとびくともしないのは実験済みです。(^^)
私はこの作業だけはディーラーに頼んでしまいました。
純正品の弱点を補強した強化ブッシュがアフターマーケットで出回っています。
これは、荷重方向の空間に樹脂製のインサートを挟んで遊びを小さくし、変形によって結合部にかかる負荷を小さくして寿命を伸ばす設計のようです。
ウチの車はこのタイプのものに交換しましたが、まだ5000kmくらいしか走行していないので、どの程度の耐久性があるかはまだ答えが出ていません。
もともとはこのブッシュが変形することでサスペンションの動きを確保する設計のように見えますから、あまり動きを制約するとほかの部分に無理が かかるかもしれません。

それから、コントロールアームは2本ともボールジョイントでストラットケースにつながっています。
このボールジョイントもガタが出ると悪影響を及ぼすと思われます。
ただ、この状態は私は経験したことがないので、具体的にどのような現象を起こすか分かりません。(多分振動は出るでしょう)
ここもゴムブーツがだめになるとジョイントがやられますので、ブーツの状態はマメにチェックしておいた方が安心です。
このアームのボールジョイントはアームと一体なので、ダメになった場合はアームごと交換しなければなりません。


3.ブレーキディスクの偏磨耗・ゆがみ

これはブレーキをかけたとき、速度域によらず振動が出ます。
最近、ウチの車はこれに起因すると思われる振動が出ていますので、調べてみるつもりです。
ディスクの磨耗だけなら、研磨してやるか交換すれば解決します。
ただ、ゆがみが出ている場合、原因のひとつがディスクの熱容量不足による過熱にあるようです。
これが出る場合には、ブレーキに負荷がかかりすぎるような走り方をしている可能性もありますから、走り方を変えないと、新しい部品に 変えてもじきに再発するかもしれません。
あるいは放熱のよいディスクに換えるのも手かと思います。
交換する場合、E28のフロントブレーキディスクは六角穴付きボルトでハブに止まっているだけなので、ブレーキキャリパを外し、ディスクを 止めているボルトを取れば外せます。
研磨して使える程度の磨耗なら、車につけたままで研磨した方が楽でしょう。
・・・ところで、どなたか愛知県内で車につけた状態で研磨してくれるところ、ご存じないですか?



私に書くことができるのはこんな程度ですが、もっとも発生する可能性の高い要因についてはカバーできているのでは ないかと思います。

次回は、「ガラスのAT」の破損と載せ換え、それからどうやったら長持ちするかについて書いてみようと思います。


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