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第3話 「あなたのショックは大丈夫?」

(作成:1997年10月31日 改訂:2006年9月17日)

(TEXT : OZW / E34-ALPINA B10 Biturbo & E32-750iL )

<あなたのショックは大丈夫?>

ショックは、タイヤやブレーキパッドなどと同じように消耗品であるということ に、異を唱える人は、いないでしょう。
それでは皆さんは、どれくらいで交換している、あるいは、するつもりでしょうか? 40000q? 70000q? へたってしまったと感じたら交換、という人もいるでしょ うし、中には、一生換えないという人もいるかもしれません。
確かに、ショックの寿命は、走行条件、スプリングのレート、車重などによって 大きく変わってきますので、一概に何q走ったら交換、というふうには言えませ ん。それにショックが完全に抜けてしまっていても、とりあえずは走りますし、 車検も問題なく通ってしまいますから、へたったまま平気で乗っている人も、結 構いるんではないかと思います。
しかし、ショックが抜けてしまうと、よく言われるような、直進安定性が損なわ れるとか、コーナリングで踏ん張りが効かないとかということの他に、突き上げ のショックが大きくなって、乗り心地がかえって悪くなる、ブレーキング時にフ ロントが沈んでしまって、前輪は、ロックしやすくなり、後輪は浮いてしまって 、制動力が落ち、結果、制動距離がかなり長くなってしまう、ということがあり ます。ショックは、タイヤやブレーキと並んで、最重要保安部品なんです。
ですから、私の場合、中古で車を購入するときは、走行距離に関わらず、必ずシ ョックは、新品にしてもらってきました。(B10は、60000qで購入しました が、前のオーナーの走りが過激だったせいもあって、完全に抜けてました。75 0は、40000qでしたが、少なくともフロントは結構へたってました。)


<ショックのメーカーによる違い>

よく高いオイルで長く乗るより、安いオイルで3000q毎に交換した方がいいとい う人がいます。これには、私は、賛成しかねます。なぜなら、オイルには、一流 ブランドの高いのと、聞いたことのないメーカーの安物では、980円の中国製ウ ォークマン(みたいなやつ)と、SONYのMDウォークマンの違いくらいあるからで す。これに対して、ショックのメーカーによる違いは、パソコンのメーカーによ る違いぐらいだと思います。大御所BILSTEINは、コンピュータの巨人IBM、日本 では圧倒的シェアを占めるKAYABAは、NEC、熱狂的ファンの多いオーリンズは、 アップル、質実剛健、合理的なBOGEやKONIは、DELとかCOMPAQ、コストパフォー マンスではピカ一のモンローは、富士通といった感じでしょうか。
また、3年前の50万円パソコンより、最新の20万円パソコンの方が、遙かに 性能が上なように、ショックに関しても、ちょっとへたった超高級品より、激安 でも新品の方が、遙かに性能は上なんです。
ですから、ショックを選ぶときには、メーカーよりも、減衰力、つまり硬さで先 ず選ぶべきでしょう。
これは硬ければ速くなると思ってる人がいますが、実際は適度にロールしたほう がタイムが出たりしますし、硬すぎると直進性は悪くなります。第一、もっぱら ファミリーユースとか、デートに使う車にスポーツタイプのショックなんて付け ようものなら、きっとブーイングの嵐になるでしょう。(あなたはそれに耐える 勇気、ありますか)
また、最近は、BTSキットのようにスプリングとセットになっている物が人気 のようですが、峠命!という走りをする人ならいいですけど、時々スポーティな 走りも楽しみたいというぐらいの人なら、スプリングにまでは、手を出さない方 がいいように思います。BMWはそれ自体かなりスポーティーな車ですから、シ ョックだけの交換でも相当なレベルでスポーツ走行できると思いますよ。それで 満足できないと言うのであれば、そこではじめてスプリング交換すればいいんじ ゃないかな。でも、そういう人は、全体から見ればすごく少ないと思いますよ。 (いることは、いるけど。えっ?それって俺のこと?)
さて、こうしたことを前提にするなら、ショックメーカーを選ぶ基準としては、 個人的な感覚の好き嫌いとか、予算の関係で選んで、後は早めに買い換えていく のがいいんじゃないか、と私は思います。
とはいえ、この個人的な感覚の好き嫌いというフがなかなか曲者で、同じ様な減 衰力でも、メーカーによってかなり感じが違うことは、確かです。
同じ高速道路の継ぎ目を越えるときでも、ビルスタインは、コツンコツンと言っ た感じで、剛性感が高いような印象(あくまでも印象です)を与えるのに対し、 BM御用達のBOGEは、グトングトンと言った感じで、粘りを感じさせます。日本 の、工事でガタガタにされた道路を走るには、カヤバが一番だと思います。本当 に上手にショックを吸収して、ハンドリングへの悪影響を一番少なくしてくれる 感じです。KONIは、高速コーナーでは、グッと踏ん張ってくれて、一番安定して いると思います。スプリングのストロークが短い車には、モンローが合っている ような気がします。オーリンズは、ちょっと高いような気がして個人的には、好 きではありません。(GTRに20段調整とか言う高いのつけたのに、タイムで なかったので、嫌いになった)これには、オーリンズファンから、かなりの反論 が予想されます。(ちょっと怖いなあ。いいとか悪いとかでなく、あくまで好き 嫌いの問題ですからね。一応念のため。)
こういう中で、私の独断と偏見によるBimmerへのお薦めは、普通に走る人には、 純正品。元気に走る人には、ビルスタイン。過激に走る人には、エナペタル、 といったところでしょうか。(エナペタルというのは、レース界では、世界的に 有名な、名古屋にあるビルスタインショック専門のチューナーです。ドライバー の、例えば、今、自分が履いているビルスタインを持ち込んで、伸び側の減衰力 を〜s/sにして、縮み側は、気持ちもう少し硬めに、などという要求に応じて、 1本1本手作りで対応してくれます。)


<レベライザー車はちょっと困る>

過激な走りをする人なら、レベライザーをカットして、エナペタル装着、スプリ ングもハードにして、ということで問題ないのですが、そこまで元気な走りをし ない人にとっては、レベリング機能を殺してしまうのには、抵抗があります。 畢竟、純正品を使うということになるのでしょうが、一番安いはずの純正品が、 べらぼうに高いんですね。B10で4本100万円、750でも、リア1本で二十 数万円。ビルスタインなどのアフターマーケットより、大袈裟じゃなく、本当、 一桁違うんですよね。
そこで、私がお薦めするのは、OEMの個人輸入です。OEMというのは、純正 品と全く同じものなんですが、流通経路がBMWジャパン経由ではなく、BMW に部品を供給しているメーカーから直接取り寄せた製品のことです。メーカーの 保証も付いていますから、純正品と変わりません。というか、純正品そのものな んですけど、パッケージにBMWと書かれていないというだけです。私の場合、 750が今ちょうど75000q走行、つまりショック交換後35000qで、早くも、ぬ け始めちゃったんですね。そんな過激な走りは、してないんですよ。ローダウン にしてるのもあるんですが、750のフロントショックは、5シリーズのと減衰 力とか、径の太さとか一緒なんです。長さは違うけど、ほとんど共通部品ででき てるみたいなんです。これでV12のあのくそ重いエンジン支えてれば、あっと 言う間に抜けますよね。40000qで交換させたとき、ディーラーの人は、70000q 以下で交換する人はいない!なんて言ってたけど、少なくとも、フロントは、70 000qなんて絶対持たないですよ。B10も、もう35000qぐらい元気に走ってる けど、こちらは、まだ全然大丈夫みたいです。
とにかく、750の方は、交換することに決めて、アメリカのパーツのディスト リビューターに注文して、ショック4本送ってもらいました。送料とか、こちら からの送金手数料とか全部入れて、130000円弱でした。しかも、頼んでから4日 で着きました。
交換は、自分でやりたかったのですが、最近ちょっと時間がないので、家のすぐ 近くの外車専門の修理工場(ここのオーナー、すごい経歴の持ち主なんで、今度 の機会に是非紹介したいと思います。)に頼んで、工賃44000円でした。全部で 170000円ちょっと。ディーラで全部やってもらうのと比べ、リアショック1本分 の値段で、4本全部交換して、しかも、かなりお釣りが来たというわけです。5 シリーズのレベリングショックなら、もっと安く入ると思います。
取り外したショックを確認すると、やはりフロントは、アウト。でも、リアは、 まだ大丈夫でした。
個人輸入に関しては、ショック以外でも、日本で買う値段の3分の1以下で手に 入る物が結構あります。というか、ほとんどの部品がそうです。ビルスタインな どのアフターマ[ケット品でも、かなり安いです。ですから、英語のいける人は 、直接アメリカやドイツへ電話でやりとりして下さい。とにかく、やらなきゃ絶 対損です。英語に自信のない人は、私にメール下さい。私に出来ることなら、喜 んでお手伝いします。


<GTRと勝負>

さて、前回同様またまた話がそれちゃいましたが、B10に話を戻してっと。 前回のサーキットランは、消化不良に終わってしまったので、もう一度チャレン ジ!今回は、R32GTRも持ち込んで、勝負だぁー!!(年を考えろ、っちゅ ーに)
このGTR、以前私が乗ってたやつですが、うちの会社の社員がボーナスで現金 より現物支給でよこせー、と言うことで私から奪っていった車です。自分として は、かなり手をかけた車で、今でも未練があるんだな。特注の100パイマフラ ー、大容量インタークーラーにオイルクーラー、ニスモタービンにニスモローター、 エンドレスブレーキパッド、空燃費計を使ってのオートクチュールコンピュータ チューン。EVC付けて加給圧1.2キロで、実測420馬力。足回りは現在、土屋圭 一スペシャル。
対するB10 Bi-Turbo は、全部純正だからフルノーマル??最大加給圧0.75キ ロ(と言ってもいつも最大加給圧。雨が降ろうが何だろうが、常にフルブースト !!)で、標榜370馬力。
車重は同じくらいだから、パワーの差は、テクニックでカバーだ。もし、私に勝 ったら、焼き肉食い放題だー、ということでタイムトライアル勝負開始。
先ずは、GTRから。ピットロードからスタート。スタートダッシュは、四駆の Rが断然有利。外から見てても、おー、やっぱり速い!3周してそのトータルタ イムで競うルール。最終コーナーをきれいにドリフト決めてコントロールライン 通過。私の知らないところで練習してたな。一緒についてきた社員の女の子たち は、焼き肉が賭かってるとあって拍手喝采。
ぬぅあっははは!しかーし、未熟者め!派手なドリフトは、タイムトライアルで は、単なる無駄な動きにしかすぎないのだよ。
それでもタイムは、1分57秒フラット。ノーマルGTRの平均より、5秒は速 いタイムといったところ。
次は、いよいよB10のスタート。0発進スタートは久しぶりなので、ちょっと 緊張したけど、強化クラッチのイメージとはほど遠い、普通の乗用車と変わらな い軽いタッチと、女の子がやってもエンストしない、幅のある半クラッチ状態の おかげで、スムースに発進。前回はまともに曲がれなかった1コーナーを今度は 、ギリギリのプレーキングで進入。プレーキングを残したままハンドルを切ると 後輪がズリズリ。この味はFRでしか味わえない。まだ余裕があるんでもう少し アクセルを踏み込むと、きれいに後輪が回り込んでコーナーをクリア。コントロ ールの幅が目茶広い。つまり、後輪が滑り初めて、そこからさらにアクセルを踏 み込んでスピンに至るまでの幅がかなりあるということ。コントロールしやすい 、ということだけど、限界が低くて初心者向け、という言い方もできる。そのま まS字に進入。ここは2速全開で通り抜ける。途中、3速にアップするか迷うと ころだけど、B10はハイギアードな設定なので、2速のままでクランク突入。 その先は1速に落として、サイドブレーキターンでヘアピンに入る。265のタ イヤなのに玩具のように回る。最終コーナーは、グリップ走行を心がけるも、ア クセルを踏み込むとズルッーといきそう。ここは、かなり欲求不満が残るところ 。要するに、サーキットでは、ヒレリーPゼロでは、完全に役不足。「ピレリー といえば、私の若い頃には、憧れのタイヤだったけど、時代は、このタイヤも置 き去りにしてしまったんだなあ。タイヤを替えて、ショックも、あとほんの少し 固めた方がサーキットではいいかもしれない。これだけで1秒か2秒ぐらいは確 実に速くなる。」などと思いつつ3周終了。
1分56秒31。(コンマ7秒差でB10の勝ち!やったね。)
予想に反して、実にマイルドなセッティングのB10でしたが、ストリートでは これがベストセッティングだと思います。実際サーキットのコーナリングに合わ せてサスセッティングすると、高速での直進安定性がかなりひどくなったりしま すから。200q超えてからの直進安定性は、GTRじゃ勝負になりませんし、こ の車の使用の9割が高速道路ですから、私は、このままどこもいじらずに乗るつ もりです。
さて、最後に久々にRを借りて乗ってみる。クラッチ重たーい!でも絶妙のペダ ル配置でヒールアンドトゥーは、こっちの方がやりやすい。やっぱりサーキット で一番生き生きする車だと感じつつ、無難に3周終了。
1分55秒18。
女の子たちは、「やったー。わぁーい、焼き肉だ。」と騒いでる。ええっ?これ って、もしかしてオウンゴール!?
やっぱりタイヤだけは替えようかな。。。。


<B10のオイル交換>

一番最後になってしまいましたが、ここは、一応B10のメンテナンスコーナー なので、メンテ関係のこと、ちょっとだけ書いておきます。
前回のサスペンション修理後、サーキット走行やメーター読みで300q出したり とか、0〜400メートル発進(12秒代半ば。練習すればもうちょっと速くなる かも)とかやって遊んでしまったので(もちろん公道じゃありませんよ)、早 めにオイル交換することにしました。
イギリス行ったときに見つけたMOTUL Power Racing(MOTULについては、メンテ 5のJsさんが第19話の中で詳しく報告されています。)に交換しました。 (日本で売られてる値段の半分ぐらいだったと思います。これなんかも、例え ば、20リッター入りのペールカンを仲間で共同輸入して、みんなで分ければ、 送料なんかも折半になって、かなり安く手に入ると思います。)
B10の場合は交換後、はじめの1000qぐらいは、かえってエンジンが重くなる 感じでしたがコンプレッションは上がって、低速トルクはアップしました。1000 qを越えたあたりから急にエンジンが軽くなって、吹け上がりは、最高です。カ ストロールのRSなんかだと、はじめの1000qはすごく軽いんですが、その後は イマイチというのに比べると、かなり長くその性能を維持できるようです。

次回は、このコーナー本来の趣旨に戻って、B10の「排気ガス臭くないか。俺 はまだ死にたくないぞー事件」をお送りしたいと思います。


*購入後、走行3000q      1000q〜3000qの平均燃費7.2q/l
今回のメンテ費用13,200円   累計のメンテ費用13,200円


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