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「No.31 長嶋さんの体験談」

(作成:1997年5月29日 改訂:1997年7月18日)


(TEXT : 長嶋 / E36 328iクーペ)
愉快な思い出ではありませんが、皆様のお役に立つ(?)のならということで投稿 します。
なお、もう半年以上も前のことなので記憶違いもあるかもしれません。

日時:
   1996年10月18日0時25分
場所:
   神奈川県横浜市青葉区
第一当事者/車:
   相手(50代女性)/現行型日産セフィーロ
第二当事者/車:
   わたし/96年式328iクーペ(8月購入、8,127km 走行)
状況:
   正面衝突
原因:
   第一当事者のいねむり運転
備考:
   両車とも同乗者なし


【こっち来るな〜】

その日も仕事で深夜に帰宅、夕食を取り損ねたのでラーメンでも食べようと発車。
幅5m程度の道路(センターラインあり)を走行中、100mほど先の交差点で信号が赤になっ たため、アクセルを抜き惰性走行。交差道左側より1台が右折、こちらに接近の後すれ違がって…、 えっ?真ッ正面!!暗闇の中をライトが急迫。
“何故あいつは俺の車線を走ってるんだ。どうして右へ戻らない?うわ〜、来るな〜!”
で、正面衝突と相成りました。
衝突の後、相手のくるまはわたしの左側方の歩道を通過し、右車線へ戻り停車。“ てめー、逃げるつもりだったな”
(これは後に相手にとって不利な事象として証言。向こうは必 死に逃走の意思を否定しておりました)
(注:左右はすべてわたしの進行方向に向かってのものです。)


【直後の行動】

・深呼吸の後、頚部および四肢の稼動を確認
・ハザード点灯
・サイドブレーキを引き、セレクターをPに入れ、エンジン停止
・まだ電気が供給されているうちにサンルーフを閉鎖
・降車して、フロント部の損傷を確認(泣けました)
・警察へ連絡(管轄内の地名くらい覚えてくれ)
・相手のくるま確認(運転者はすでに降車)
・相手確認(本当はこれを優先すべき)
相手は、分けの判らないうわ言を言っていますが、怪我はない模様です。
“やってくれたな、このジャンキー婆ぁ”


【潰れた方が偉いのか?】

破損状況は下記の通り。
・フロントバンパーおよびグリル陥没
・ラジエター損壊、クーラント噴出
・フロント部灯火類全滅(一部脱落)
・エンジンフード屈曲
・左右フェンダー歪曲認められず
・フロントタイヤ問題なし
・エンジン本体無傷(後日ディーラーに確認)

気になったのは、ステアリングのリンケージです。ここをやってしまうとハンドリ ングに致命的影響が出る可能性大。
これはE36の弱点の一つで、ラックがフロントアクスルより前にあるため破損し易いと聞きます。
暗くてよく見えなかったのですが、どうやらそこまでは逝っていない模様でした。
相手のくるまは、フロントグリルから左フェンダーにかけて思いっきり潰れて、 完治は絶望的状況。
現場検証に来た警察官も“独車は頑丈だね。
あっちのは酷いもんだよ”と言っておりました。
でも、クラッシャブルゾーンの理屈からすると潰れる方が良いような。
まあ国産はまだ潰し加減が分かっていないということでしょか。
衝突エネルギーを吸収する前に潰れ切っちゃったら役に立ちませんからね。
搭乗員が無傷なのですから、潰れなかったBMWの勝ち。


【警察は来ない、保険屋は出ない、相手は分け判らない】

実は現場は警察署と1kmと離れていないところだったのですが、いつまでたって も現れません。だいたいからして電話のとき、わざわざ交差点まで走っていって交差点名を告げた のに特定出来ないのです。
仕方ないので“御宅の警察署の前の通りをR246と反対方向に進んで突当たりの 信号を左折して…”と道案内。
結局到着まで30分以上かかりました(歩いた方が早いぞ)。
でもきっと事情が有ったのです。
警察は味方だから文句を言っちゃいけません。
警察を待つ間、保険屋に連絡しようと車検証入れから保険の案内を取り出し24時 間コールへ電話。
回線が繋がって呼出音、1回,2回,3回,…,10回,…。
“お〜い、何時まで待たせるんだ。出る気ないのか〜”
保険屋にも示談で頑張ってもらわねばなりません。
きっと事情が有るのでしょう。
諦めて翌日連絡することに。
ところで、相手はと言えば、数人の目撃者に囲まれてうずくまっておりました。
震えながら“何が有ったのよ〜。どうなってるのよ〜”の繰り返し。
“何が有ったじゃないよ。あんたがぶつけたんだよ”
周りから攻められております(おお、目撃者も味方だ)。
わたしは、“怪我はないな”(肯く相手)
“よし、後は警察が来てからだ。ちゃんと納得の行くように説明してもらうゾ”と止めを刺しました(相手沈黙)。


【おまえは多走車になるんだ】

しかし、何て不幸なくるまなんでしょう。
無理矢理右ハンドルにされた上、極東のモンスーン地帯に売り飛ばされ、2ヶ月で事故。
潰れたフロントマスクを見ながら“こいつ、これからどうなるんだろう”
(下らん感傷です、笑ってやって下さい)。
で、決めました、修理して乗り続けることに。
“多少ジオメトリーが狂ったところで、きっと俺の能力なら気付きゃしないに違いない”
この時ほど自分の鈍感さが嬉しく思えたことはありません。
“おまえは絶対に減価償却し終わるまで走らせてやる。いやそれ以上だ。 そうすりゃ修復歴なんて関係ない。だから最後まで走り貫けよ。AT壊れないでくれ。”


【ぶつけた時は忘れずに】

くるま(自走不可能)の後始末にレッカーを呼びました。
フロント大破のため、前輪をリフトアップ・後輪を接地させて引くようです。
でも、ATを牽引するときは駆動輪を浮かせないと、油切れでミッションを傷めるはず。
レッカー屋のにいちゃんは、“すぐ近くですし、慎重に運びますから大丈夫です”と言います。
まあ、彼を困らせるのも気の毒なのでよしとしました(このときは事故相手以外は誰でも許せる心境)。
ところで、深夜だったのでディーラーは連絡付かないと思い込んでいたのですが、 そう言えばあったんですね“エマージェンシー コール”。
翌日ディーラーに電話して思い出しました。
おかげで、レッカー代(4万円)立て替え。
納車時は浮かれてばかりいないで、ディーラーの説明はよく聞いておきましょう。


【エアバッグ不発】

衝突はほぼ正面ですが、正確には相手のフロント左角がこちらのフロント中央(キ ドニーグリル)を押し潰す形でした。
つまり、こちらは正面、相手はオフォセット気味の衝突だったわけです。
にもかかわらず、こちらのエアバッグは作動しませんでした(向こうはしっかり開いていました)。
知人からは“タネ無しなんじゃね〜の”とか、“本当に風船はいってるかなんて確かめようもな いもんなぁ”などと言われ、そこで、ディーラーに問い合わせたところ “低速では作動しないよう制御されています”とのこと。
これで謀らずも、わたしが停止もしくはそれに近い低速で、速度に関して危険行為 を犯していないことが証明されていたのでした。
でもね、エアバッグみたいな安全装置の制御はなるべくシンプルなほうがいいんじ ゃないかな。
速度制御してるってことは衝撃センサー以外に電子系が介在していわけですよね。
信頼性大丈夫?
ドイツ産とはいえ外車だし。
なお、エアバッグ不発でも怪我はありませんでした。
シートベルトしてましたし、十分に身構える余裕がありましたから。


【怪我はなくとも人身事故】

事前に衝突を予見し身構える余裕もあったため、外傷も痛みもありませんでした( 怒りで腹痛にはなりましたが)。
ただ後から何か出ると面倒なので、事故処理後に救急病院で検査を受け、 その場で異状なしと診断されました。
翌日、診断書をもらいに行ったのですが、医者も受け付けも “警察に提出するんですね”としつこく確認します。
警察用は特別なのかと見てみると“全治5日間”と記載されていました。
“あれ〜異状なしのはずなんだけど”
後日、警察に出頭して診断書を提出。
これを見た警官は、“5日間か。あなたに怪我させたんだから人身だな。”と言うと、 サクサクと書類を書き終え、これで相手は罰金と免停と前科。
相手に同情する気はないのですが、御役所仕事は恐ろしい。


【保険屋は出なかったが、保険金は出る】

翌朝、保険屋より電話がありました。
“昨晩いくら電話しても出なかったくせに。でも何処で聞きつけて来たんだろう。警察が連絡したのかな。”
しかし、これはわたしの早とちり、保険屋といっても相手の保険屋だったのです。
“えっ、示談て保険屋同士でやるんじゃ?素人に手を出すなんて反則じゃん”とビッビていると。
向こうからあっさり10:0で処理するとのこと。
交差点以外の道路でのセンターライン越え衝突事故の場合、 過失割合は原則10:0で、これにラインを越えていない側の危険行為が加味されるそうです (例えば制限速度オーバーは過失割合相殺の対象になり得ます)。
前述の通り、こちらはかなり低速であった証拠もあったため、すんなり10:0成立でした。
これでこちらの保険屋は出番なし、結局すべてが終わるまで一度も連絡しませんでした。
ところで、相手の保険屋は盛んに飲酒運転の可能性を尋ねてきます。
警察の調書も要領を得ない内容でしょうから疑ったのでしょう。
“えーと、飲酒ということになると保険出ないよな。俺にとって不利な話しじゃないか”ということで、 言動は混乱していたが臭気など飲酒の証拠になるものは無かったと答えました。
“すぐ警察呼んだんだから、怪しかったら彼らが調べてるでしょ”,
“そりゃまあ、そうですけど…”(そんなに落胆しないでよ)。


【貴方とは二度と会うことはないでしょう】

昼過ぎ、事故相手より電話があり、“直接会って御詫びしたい”とのこと。
わたしは、診察の結果異状なかったことを伝え、会って話すことは何もないと拒否しましたが、 是非にと食い下がるので結局最寄りの駅で会いました。
でも、会えば会ったで案の定、あ〜だ、こ〜だと愚にも付かない言い訳の繰り返し。
とうとうキレちゃいました。
“あの事故でわたしに責任があるとしたら、唯一つあの場に居たことだけです。貴方がどんな人 生を送って来てどんな生活をしているかなど、わたしにはまったく関係ありません。わたしにと って貴方は折角買った新車を潰してくれた甚だ迷惑な存在でしかないのです。どうか残りの人生 は、ひと様の迷惑とならないようせいぜい注意深く、そして出来るだけ速やかに終 えて下さい。”
最後に“今後わたしは貴方の保険屋と話しをします。貴方とは二度と会うことはな いでしょう。”と言って席を立ちました。
実際、それ以降会っていませんし、顔も名前も覚えていません(顔と名前を忘れるのはわたしの特技です)。
まあ、本当は保険屋と別に相手からも金を出させるのが賢いやり方です。
わたしは世渡りが下手。


【知らない方が人生幸せ】

1ヶ月後の11月16日、待ちに待った退院。
期待と不安で納車のときよりテンションが上がっていた気がします。
くるまを受け取るとき営業に“ちゃんと直った?”と尋ねたところ、 “それは2ヶ月で8,000km乗った長嶋さんが判断して下さい”と言われました(どういう意味だ?)。

クロスメンバーを交換しているのでボンネット開ければ事故車と一発で判りますが、外見は新車 同然、奇麗なものす。
さっそくR246で直進安定性試験。
中低速域加減速,発進,停止などハンドリングに変な癖なし。
次はいつもの急坂で全開加速試験。
以前と変らず登り切る少し前でゼブラゾーンまで吹けます。
どうやら元通り直ったようで、修理結果に大満足(知らぬが仏ですね)。
ディーラーも言っていましたが、真正面から左右均等に力を受けたのが幸いしたようです。


【財団法人日本査定協会】

保険屋とは、修理費以外に査定落ちを見舞金の形で補填することではなしを進めていました。
向こうは“査定落ちは修理費の1〜2割程度”と言っていますが、鵜呑みに出来るわけありません。
ディーラーに交渉のため査定落ちの見積もりを頼んだところ、査定根拠/詳細が社外秘であ るため出せないとの回答。
ちょっと冷たいかとは思いましたが、ハッキリ言ってくれたので時間を無駄にせずにすみました。
そこで、ディーラーの紹介してくれた“財団法人日本査定協会”へ。
ここは持ち込みで査定(有償)してくれる半公的機関で、横浜なら池辺町の陸運事 務所の隣にあります。
事前に電話で予約して指定日の午前9時より検査員(官?)2名で審査。
“ふ〜ん、マウントも交換か。外車のディーラーはきちんと直すね〜”
(結構ちゃんと修理してるんだ嬉しいな)。
手続きを含めても1時間も掛らず呆気なく終了。
午後から出社出来たのですが、そのままドライブに行っちゃいました。
後日、印紙付きの立派な査定証明書が郵送されて来ました。
記載内容は、96年11月現在の事故による査定落ち金額のみ。
内訳も事故前後の査定額もな〜んもなし。
ディーラーといい査定協会といい必要十分なことしかしません。
でも、金銭絡みのときはこの方が話しが早くて良いです。
金額は、やはり保険屋の言っていたものより多いです。
コピーを送り付けてきっちり払ってもらいました。


【そして現在】

5月28日現在、走行距離25,085kmです。
ずっと燃費をモニターしているのですが特に悪化は見られません。
その後、この事故に起因すると思われるトラブルは以下の通り。
・ワイパー掃払範囲不適(修正済)
・ウォッシャー液噴射位置不適(修正済)
・フロン漏れ(パイプ交換済)
・クーラント漏れ(時々補充で対処)
・フロントグリル塗装スポット剥離

エンジンより前の補器類を交換しているので、冷却水,潤滑油,冷媒などの液漏れ は覚悟していましたが、やはりやらかしてくれました(予想が当たって嬉しかったりして)。
クーラントについてはデポジットで漏れている場所が分かっているので、12ヶ月 点検で修理してもらいます。
クーラントはリバーザータンクをライトで照らして確認しましょう。
あのタンクは透過率が低い上に、内壁にクーラントの色素が付着するため勘違いし易いです。

塗装については、やはり12ヶ月点検時に対処してもらうつもりですが、小さいの が数箇所なのであまり大袈裟に直すつもりはありません。
一時オイル漏れもあったのですが、原因は大型カー用品店でのエレメント閉蓋の不 備によるもののようでした(ディーラーでオイル交換したら完治)。


【修理明細】

レッカー代金 18,000×1
フロントNO.プレート修正 2,760×1
フロントスポイラー(Mテク)交換(BP) 24,840×1
左右フロントバンパーショック交換(BP) 5,520×1
左右ヘッドランプ脱着・交換(BP) 12,420×1
フロントマスクパネル交換(BP) 12,420×1
フード交換(BP) 21,390×1
フードヒンジ左右交換 8,280×1
フロントサポートパネル交換(BP) 9,660×1
左ホイールハウジング板金 24,840×1
左エンジンサポート板金 28,980×1
右ホイールハウジング板金 8,280×1
右エンジンサポート板金 24,840×1
右エンジンサポート一部交換(BP) 33,120×1
ペイント一式 175,950×1
フロントスポイラー(Mテク)ペイント
フロントマスクパネル ペイント
フード ペイント
フロントサポートパネル ペイント
エンジンルーム補修ペイント
アンダーコート 9,000×1
アディショナルファン脱着・交換(BP) 5,520×1
ラジエター脱着・交換(BP) 12,420×1
クーラーコンデンサー脱着・交換(BP) 20,010×1
ウォーターポンプ交換(BP) 11,040×1
クランク プーリー交換 4,140×1
エンジンルーム内補機 脱着・交換(BP) 2,760×1
エンジンルーム内ハーネス脱着・交換(BP) 2,760×1
ショートパーツ 1,600×1
MFスポイラー セット 60,000×1
ラバー ストリップLH( 2,800×1
プロテクティブ ラバー 2,400×1
カバーM TECHNIC 530×1
オープン グリル/M TECHNIC 7,750×1
フォグランプRH(ZKW 15,200×1
FバンパーショックRH 13,100×1
FバンパーショックLH 13,100×1
Fバンパー キャリア 28,400×1
FバンパーBKT 670×2
Fグリルパネル 14,400×1
グリルLH 3,850×1
グリルRH 3,850×1
Fパネル 25,500×1
ヘッドライトKPL/RH( 36,300×1
ヘッドライトKPL/LH( 36,300×1
フラッシャーRH 3,950×1
フラッシャーLH 3,950×1
エンジン フード 65,500×1
クロス メンバー 3,750×1
カバーリング アッパー 3,450×1
サポートLH(ZKW) 2,750×1
(SO)エンジンサポート 10,700×1
サポートRH 2,250×1
ショック サポート 360×1
ブラケットLH 2,250×1
ブラケットRH 2,250×1
ラジエターA=550MM 58,700×1
ファン シュラウド 4,000×1
アディショナル ファン 51,000×1
コンデンサー 63,900×1
ファンブレード 7,150×1
ファンカップリング 25,300×1
ATウォーター ポンプ 10,300×1
プーリー 5,650×1
Cベルト5K*906 2,850×1
オイル クーラー 36,600×1
プレッシャー ホースASS 11,600×1
ホーンFIAMM 410HZ 4,500×1
ホーンFIAMM 510HZ 4,500×1
O-リング 65×2
ガスケットリングD=11 210×1
ガスケットリングD=14 210×1
ホースクランプ 120×2
クーラーガスR134A 2,000×4
アンチフリーズ1.5L 2,200×1
ブラケット ロアー 500×1
エアー ダクトLH 2,150×1
エアー ダクトRH 2,150×1
ガイド 9,600×1
ヒンジLH 3,600×1
ヒンジRH 3,600×1
ガスケット1195MM 2,600×1
ナット 50×4
ボルト4.8X19 25×4
フードキャッチ 2,000×1
フードキャッチ 1,600×1
リベット 55×2
グロメット 25×2
ベースM TECHNIC 4,300×1
カバーリングRH 2,550×1
フォグランプレンズLH 13,100×1
合計 1,227,533

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